【ブレイキング・バッド】

【ブレイキング・バッド】我らが、ウォルター・ホワイト先生の人物像に迫る『金持ちに生まれなかった優秀な男は、いかに生きていけばいいのか?…』 

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人生とは実に皮肉なものだ。とくに金持ちの家に生まれなかった優秀な研究者たる男が、頭脳だけではなくいかに体を張って生きていかねばならないのかという事に、深い哀愁を感じてしまった。というのが、全作見終わった時の、私の率直な感想だ。

 

 

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アメリカニューメキシコ州のアルバカーキという平凡な街の高校で、金にならない化学の教師をやっているがその昔は、優秀な理系の研究者だった。ウォルター先生は同じく優秀だった親友のエリオットと、恋心を抱いていたグレッチェンとの3人で、小さな化学会社を立ち上げたのだ。

 

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が、しかし残念ながらウォルター先生は他の2人とは違い金持ちの家には産まれ付いていなかった。頭脳は他の2人にも勝るとも劣らないのだが、生まれ持った身分の差を思い知り大きな劣等感から、そっとひとり会社から身を引いた。先生の高いプライドが許さなかったのであろう。

 

【ブレイキング・バッド】ウォルター・ホワイト先生の人物像に迫る

 

後にその会社は大成功し、アメリカでも有数の化学会社へと成長。エリオットとグレッチェンはさらに大金持ちとなり、なんと2人は結婚した。

 

テレビにも出演し、2人は有名人にもなった。しかし創業時の有志であったホワイト先生の事をキャスターに突っ込まれると。エリオットは「彼が会社に貢献したのは社名を決めた時ぐらいで、その後の会社の発展にはまったく役にたってはいなかった。」と発言。

 

しかし先生は、あの時の自分のアイデアを基にして会社を大きくしたくせにと思っているし、身分の差から自分はハナからのけ者だったと思っている。

 

ホワイト先生が持ち株分を売って会社を去った時に手にした金は、なんとたったの5000ドルだった。しかし当時の先生にとっては大金だ。

 

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教師の稼ぎだけではやって行けず、学校が終わると近くのスタンドでアルバイトする毎日。

 

教え子である生徒が高級車で乗り付けて来て、地べたを這いずる作業員を先生とは知らずに洗車を命ずる。

 

先生もバツ悪く身をひそめるが、生徒に気づかれてしまう。「先生。しっかり頼むよ。」

 

不条理だ。頭脳明晰であるウォルター先生がスタンドで這いずり周り、年端も行かない学生が彼女を連れて、親の金で買った高級車でドライブだ。

 

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50歳の誕生日を迎えたある日、ウォルター先生は突然倒れ救急搬送される。医者に宣告されたのは余命2年の肺がん、手術は既に不可能だそうだ。不思議と先生は慌てる様子を見せなかった。

 

しかし状況は深刻だ。特に金の問題。3年後には自分だけこの世にいない…。しかも、愛する家族に残していけるような財産も皆無だ。皆無どころかたんまり残る住宅ローン、これからかかる生活費や教育費はだれが稼ぎ出すというんだ??

 

【ブレイキング・バッド】ウォルター・ホワイト先生の人物像に迫る

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現状でも厳しい経済状態であるにも関わらず、障害のある息子とまだ年の若い妻。遅ればせながら授かった娘がもうすぐ産まれてくる。

 

嗚呼なんて役立たずで情けない男なんだ…。

 

自分に残された時間はあと2年間。四の五の言っているヒマはない。頭と体が動くうちに、なんとか一財産家族に残して行かなければ…。先生の頭はフル回転だ。

 

真っ当な道を歩んで来たが、家柄が良いわけじゃなくチャンスも棒に振った。すでに結果は出てる。
頭が良いからって、裕福な生活ができる世の中じゃない。要は金を稼げなければこの世は地獄だ。

 

先生を悪の道に進ませるには、充分すぎるほどの条件が整っていた。

 

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そんなウォルター先生がわずか2年後に、メタンフェタミンの帝王と呼ばれるまでになった。それまでの経緯で見せて来た先生の人となり、とやらを見て行こう。

死を覚悟した男だからなのかクソ度胸を発揮

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後に因縁の関係となる、元教え子で薬の売人ジェシーピンクマンを巻き込み、オンボロキャンピングカーの中で風邪薬を原料にブルーメス作りが始まった。

 

海の物とも山のもとも知れないこの闇業界に、化学の知識だけで踏み込んでいった先生だったが当然のごとく矢継ぎ早にトラブルに見舞われる。

 

イカレタ連中たちに追い詰められ、即命の危険にさらされる。大抵の男ならヤバい奴らからは逃げるが勝ち、となる所だが先生はそうじゃない。まさに命をかけて金儲けをする覚悟だ。

 

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ピンチになればなるほどクソ度胸を発揮する。

 

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銃を頭に突き付けられたのも、一度や二度じゃない!

 

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危険になればなるほど頭が周るようだ。

綱渡りの連続も、優秀な化学力で勝ち抜ける。

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『簡単な科学さ・・・・・・』

 

ホワイト先生の優秀な化学力は、絶対絶命と思われる状況でいかんなく発揮される。

 

ならず者たちには、およそ考え付かない攻撃方法で、相手を撃退!皮を切らせて骨を断つ。

 

 

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ちょっとやりすぎる点は否めない。

究極の負けず嫌いな先生

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基はといえば、貧富の格差を思い知り強い劣等感にさいなまれ、自らグレッチェンのもとを去ったのがはじまりだ。

 

まあ、もし先生がそのまま辞めずに会社に残っていたとしても社長にはなれなかったと思う。
当然、エリオットの親もグレッチェンの親も金持ちなのだから会社への出資は難なくできただろう。となると出資できないホワイト先生は常に弱い立場に立たされたことだろう。会社とはそういう所だ。

 

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しかし、ホワイト先生は世の中の矛盾を大人として受け止めたフリはしていたが、実のところ心の中ではまったくもってして、その矛盾を許す気はなかったのだろう。

 

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先生の鉄のプライドは誰も壊すことが、できなかったのだから。

 

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目的のためなら手段を選ばず非道になれる。

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相棒であるジェシーを地獄の底へと叩き込んだ、あのすずらんの毒事件。

 

いけしゃあしゃあと、ジェシーに嘘を付き当然のごとく幼い子供に毒を盛るという非人道ぶり。

 

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状況的には仕方なかった的な言い訳を先生はしていたが、ジェシーを味方につける方法ならまだ他にも充分に策はあっただろうにと思う。

 

ジェシーを誰かに取られるのが嫌で、自分の思い通りにさせたいという支配欲がそうさせたのかもしれない。

 

このすずらん事件以前にも、ジェシーの恋人を目の前で見殺しにしている。

 

【ブレイキング・バッド】ウォルター・ホワイト先生の人物像に迫る

周りの人間の運命を変えてしまう、はた迷惑な巻き込み力

先生は自分の目的を達成させるためとはいえ、たくさんの命を犠牲にした。

 

中でもショッキングだったのはやはり義理の弟ハンクのことだろう。たまたま義理の弟が麻薬取締局の捜査官だったという残念な運命だ。

 

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正義感に熱く、仕事熱心。義理の兄であるホワイト先生のことも慕っており、実に良好な関係であった。普通であれば幸せな人生を送っていたに違いないだろう。普通であればだが・・・・。

 

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ハイゼンベルグが義理の兄だったことがわかったときの、ハンクの気持ちを思うと気の毒でならない。

 

教え子であり大切な相棒であるジェシー・ピンクマンへの想い

ホワイト先生がジェシーにしたことは、愛と憎しみの裏返しだったと思われる。
最初は教え子であり、大事な相棒であり、息子のような存在である。しかしそれ以上の感情かもしれない。

 

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もしもホワイト先生がジェシーに片思いをしている女性であったとしたならば、史上最強のストーカーであろう。

 

物語終盤にいたっては、先生のジェシーへの想いは愛情が故に憎しみへと変わり命までもを奪おうともするようになってしまったが、最後にはちゃんと命を救っている。

 

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この2年間の快挙を成し遂げられたのは、最初にジェシーが麻薬の世界に引き入れてくれたからであり律儀な先生はそのことに深く感謝しているのだろと思う。

 

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そして最後まで先生を裏切ることも無く、相棒としていてくれた事もよくわかっていたのだと思う。

 

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死を宣告され、突然輝き出した命。

結局、先生の最後の2年間は今まで生きてきた52年間の中でひときわ輝かしい2年だったのだと思う。

 

劣等感に悩まされ続けた数十年間のストレスをすべてぶちまけ、破れかぶれではあるが自分の才覚で大金を稼ぎ大物に上り詰めたわけだから。先生の虚栄心はすっかり満たされたことだろうと思う。

 

それが悪の道だったとしてもだ。

 

 

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『スカイラー。私のやったことはすべてわかってほしいんだ。私のやったことは家族のためではなく、すべて自分のためにやった。好きでやった。わたしには才能があった。』

 

『それに心から思えた。生きていると…』

 

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※写真はすべてNetflixより転載

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