【タイラント -独裁国家-】シーズン1~3まで全部観た 感想ネタバレ

【タイラント -独裁国家-】シーズン1~3まで全部観た 感想ネタバレ

【タイラント -独裁国家-】シーズン1~3まで全部観た 感想ネタバレ

完全ネタバレなので、閲覧注意です。

「タイラント-独裁国家-」は、中東にあるアブディンという独裁国家の大統領一家の物語である。自らの選択でアメリカに渡った大統領の次男が、20年ぶりにアメリカの家族を連れて母国へ帰郷し、一家の現実に直面する。民主化の波が一家その存続の危機へと追いやっている。過激な父親を嫌いアメリカへ20年逃げていたが、父亡き後、兄が大統領になる。独裁を続けようとする兄夫婦と、現体制側。武力と恐怖で維持してきたが、前大統領没を期に民衆を抑え込めないでいた。革命派のリーダーによる武力の巻き返しで一家に存亡の危機。アメリカ仕込みの民主主義を持ち込もうとする大統領の次男が勝つか、大統領夫人である兄の妻の現体制維持派が勝つのか。はたまた、立ち上がった民衆が勝利者となるのか。

 

 

感想

理想と現実 民主主義と独裁主義

 

【タイラント -独裁国家-】シーズン1~3まで全部観た 感想ネタバレ

 

【タイラント -独裁国家-】シーズン1~3まで全部観た 感想ネタバレ

 

ひとつの国家の主義を、変えるためには一度その地をサラ地にする必要があるようだ。
サラ地にすることを可能とした者だけが、その地にひとり立っていられるというわけだ。

 

負けた人間は皆倒れている。理想はいくらでも口で語ることはできるが、その理想を現実にしようと行動に出た時には必ず最終的に武力に訴えかける他ないということだ。そして最後にはひとり立っていなければ勝利と言えない。

 

それが、民主主義でも独裁主義も変わりはないらしい。主人公のバッサム・アルファイードの変貌ぶりが、よくそれを現していると思う。

 

シーズン1から3までの全30話で、彼とその家族の考え方の変わりようがよく解る。

 

1話目で彼は、25年前に圧政で苦しむ故郷を捨てアメリカ人として民主主義国家にどっぷり浸かり生活していた。自身が産まれた王家の圧政と苦しむ民衆を捨て、今後も関わりを持たないつもりだったはずが、
最終話には、心から侮蔑していた大統領の父、クーデターまで起こして反目していた兄と同じ独裁者になってしまう。

 

体を張って強固に民主化を推し進めていた彼が、結局は元のサヤ独裁者になるという話だ。

 

彼の地での歴史は繰り返されるという悲劇だと思う。

 

 

憎しみと復讐の連鎖

 

【タイラント -独裁国家-】シーズン1~3まで全部観た 感想ネタバレ

 

対話による民主化を徹底的に阻む人物、イハブ。
彼もまた、理想と現実の狭間で変わってしまった人物だ。

 

父親も革命家で、圧政から民衆を開放しようと活動していたが軍の裏切りによる大量虐殺の末に追いやられる。イハブはその意志を継ぎ稼働していたが、愛する妻を殺され復讐の鬼と化す。

 

民衆を開放するという大義は掲げるが、やっていることは虐殺だ。王家への復讐心で動かされている。
穏便に、対話による民主化などいとも簡単にぶち壊せる存在だ。

 

戦争で家族を殺された者たちの憎しみは、復讐が終わるまで癒えることは無い。これが、争いの連鎖の本質だろう。

 

 

兄ジャマールの苦悩とその人生

 

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王家アルファイード一家の長男として産まれ、次期大統領を約束された暴君。

 

しかし彼が暴君として振る舞うには理由があったと思う。
自身でもよく漏らしていたが、大統領の器ではないという自覚だ。

 

彼は本来、弟バッサムよりも優しい人間だ。子供のころ父に命じられ、犯罪者を目の前で射殺するように命じられるが、兄ジャマールにはできずオソソしてしまう。代わりに眉1つ動かさずに引き金を引いたのは弟バッサムのほうだ。

 

兄ジャマールが一番大事にしていたのは家族であり、家族への信頼だ。
それは、家族・妻・民衆からいつも嫌われていたという過去があるからだ。愛されたいのだ。だから家族からの裏切りや嘘が絶対に許せない。純粋すぎる愛情の持ち主だからだ。それ故、反対に暴君にもなりうる。

 

残念なのは、女性蔑視な部分がありそれが災いして最後は、息子の嫁に後ろから撃たれ瀕死に。
息子の嫁には、結婚初夜貞操を確かめるといって体に指を入れるという、ありえない事をした。これものちのち息子が恥を掻かないように確かめたようだが、それは行き過ぎたようだ。

 

この事が後に息子に知れて、瀕死の病床で殺されてしまう。息子に殺される事がわかったときにも「俺はお前を愛しているよ」と抵抗もせずにこと切れた。

 

さらに彼はかわいそうだ。最愛の息子と思っていたアハメドは、実は弟バッサムの子供だった。そのことは知らずに亡くなったが妻、レイラがずっと黙っていたのだ。妻からも愛されていなかった。

 

 

すべてを奪われた、アハメドの妻 ナスラット

 

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美しく、蝶よ花よで育てられたに違いない少女ナスラット。ジャマールの一人息子アハメドの妻としてアルファイード一家に嫁いでくる。その日からが彼女の悲劇の人生のはじまりだった。

 

  • 結婚初夜、新郎の父親ジャマールに乱暴され貞操を奪われる。
  • それを理由に離婚を申し出るが、その返事として父親は腕を撃たれる。
  • 父親がクーデターを事前にジャマールに密告するが処刑される。
  • 男の子を身ごもるが、流産。その際子宮も無くなってしまう。
  • 跡継ぎが産めないからと離婚させられ国外追放を言いつけられる。
  • 復讐と正義からジャマールを撃ったことで投獄中、自殺に見せかけて殺される。

 

見目麗しき、彼女に起こったこととは思えない仕打ちばかりだ。

 

 

果てしなく権力に固執する女 レイラ・アルファイード

 

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美貌の裏に、果てしない権力への願望を持つ女 レイラ。

 

その時々の立場をうまく立ち回って、権力を求め最後には現政府を差し置いて、私が大統領だと新政府を樹立するほど権力の亡者だ。

 

夫、ジャマールを破滅に追い込んだのも彼女だと思うしバッサムの処刑を切望したのも彼女だ。ナスラットの追放も彼女の意向だ。
本当に末恐ろしい女だと思う。

 

夫の亡骸に向かって、涙は見せたものの「私は、あなたに全部捧げたのよ。高くついたわ。」とのたまわれた。

 

彼女が大統領になったら、公約していた民主主義とは到底程遠い国になりそうだが。

 

ドロドロの人間模様 シーズン3まで暗雲が立ち込めているストーリー

 

シリーズにずっと重苦しい空気が漂って苦しくなってくる。
そんな感じがたまらない人にはうってつけのドラマだと思う。

 

触れていないが、ジャマールには隠し子の件やら、母親を間違えて殺してしまう件やら、バッサムは女にモテすぎな件やら、親友の娘を殺してしまう件やら、自身の娘も殺されてしまう件やら、息子が同性愛者の件やら、愛人の件やら他にもいろいろとドロドロしている点も見どころです。

 


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